相続人が多い場合、相続手続きはどうする?

はじめに

相続手続きを進める中で、「相続人が何人もいて、手続きがなかなか進まない」というケースがあります。
特に、長年にわたって相続登記をしていない不動産では、相続人が何代にもわたって増えてしまい、気がつけば相続人が多数になっていることがあります。
また、相続人の中に、

  • 海外に住んでいる人がいる
  • 遠方に住んでいて、連絡を取ることが難しい
  • 現在どこに住んでいるのか分からず、連絡が取れない人がいる

といった事情があると、さらに手続きが難しくなることがあります。
このような場合でも、相続人を一人ずつ確認し、状況に応じた方法で手続きを進めていくことが大切です。
今回から3回に分けて、こうした相続手続きが進みにくいケースについて、分かりやすく解説していきます。
今回は、「相続人が多い場合」について見ていきましょう。

1.なぜ相続人が多くなるのでしょうか?

相続人が多くなる理由はいくつかあります。
代表的なものとして、相続登記を長年行っていないケース、子供がいないケース、亡くなられた方に前の婚姻関係などによる子がいるケースなどがあります。

長年、相続登記をしていない

例えば、祖父が亡くなった際に不動産の相続登記をしないまま年月が経過し、その後、祖父の子どもも亡くなったとします。

この場合、祖父の子どもが有していた相続分は、その子どもの相続人へと引き継がれます。

このように、相続登記をしないまま次の相続が発生すると、相続関係が複雑になり、相続人が多数に及ぶことがあります。

子どもがいない場合

子供がなく、親などの直系尊属もすでに亡くなっている場合は、兄弟姉妹が相続人となります。さらに、兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合には、その子どもである甥や姪が相続人となることもあります。

このように、子どもがいない場合には、相続人が兄弟姉妹や甥・姪にまで広がり、相続手続きが複雑になることがあります。

異母兄弟・異父兄弟などがいる

亡くなられた方に前の配偶者との間の子どもがいる場合、その子どもの存在を現在の配偶者や子どもが知らなかったり、長年連絡を取っていなかったりすることもあります。

しかし、前の配偶者との間の子どもも相続人となるため、相続手続きを進める際には、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍などを確認し、相続人を正確に把握することが大切です。

2.まずは相続人を正確に確認する

相続手続きを進めるためには、誰が相続人になるのかを正確に確認する必要があります。
そのため、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍などを収集し、相続関係を調査します。
特に、長年相続登記をしていない不動産では、相続人が世代をまたいで増えていることもあります。相続人を正確に把握することは、その後の遺産分割協議や相続登記を進めるうえで重要な第一歩となります。

3.これまで把握していなかった相続人が見つかった場合は?

戸籍を調べた結果、これまで把握していなかった相続人が見つかることがあります。
そのような場合には、まずその相続人に連絡を取り、今回の相続について説明する必要があります。

近くに住んでいる方であれば、直接訪問して事情を説明する方法もあります。

一方、遠方に住んでいる場合や、長年疎遠になっている場合、相手との関係性から直接連絡することが難しい場合などは、まず手紙を送って事情を説明し、連絡を取る方法が考えられます。
ただし、初めて連絡する相続人に対して、いきなり「遺産分割協議書に署名してください」とお願いするのではなく、亡くなられた方との関係や、今回の相続に至った経緯などを丁寧に説明することが大切です。

どのような内容で手紙を送ればよいのか、どのような順番で話を進めればよいのか、分からないこともあると思います。

当事務所では、戸籍を調べた結果、これまで把握していなかった相続人が見つかったケースを多数取り扱ってきました。

それらの経験をもとに、相続人への連絡方法や手続きの進め方について一緒に整理し、新たな相続人へ送付する手紙の文案を考えるなど、円滑に手続きを進めるためのサポートを行っています。

なお、司法書士は弁護士とは異なり、相続人の代理人として相続人同士の交渉を行い、遺産分割の話し合いをまとめることはできません。
あくまで、お客様ご自身が相続人へ連絡し、話し合いを進めていくための準備や書類作成などをサポートする形になります。

4.遺産分割協議がまとまらない場合は?

相続人が複数いる場合、遺産をどのように分けるのかについて、相続人同士で話し合うことになります。

この話し合いを遺産分割協議といいます。

相続人全員で話し合いがまとまれば、その内容に従って相続手続きを進めることができます。
しかし、相続人が多い場合には、それぞれの意見がまとまらず、遺産分割協議がなかなか成立しないこともあります。

そのような場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、裁判所を介して話し合いを進める方法があります。
遺産分割調停では、裁判官と調停委員で構成される調停委員会が、相続人それぞれの意見を聞きながら、合意に向けて話し合いを進めます。

話し合いがまとまれば調停成立となりますが、合意に至らず調停が不成立となった場合には、自動的に審判手続に移行します。審判では、裁判官がさまざまな事情を考慮して、遺産の分割について判断します。

なお、先にも述べたとおり、司法書士は弁護士とは異なり、遺産分割調停において相続人の代理人となることはできません。調停の申立てから話し合いまで、一貫して代理人として対応してもらいたい場合には、弁護士への依頼を検討することになります。ただし、依頼する業務の内容によっては、費用が高額になることもあります。

一方、調停の申立てに必要な書類の作成や、戸籍などの必要書類の収集・準備については、司法書士がお手伝いすることも可能です。

「調停を申し立てたいけれど、書類の作成や必要書類の集め方が分からない」「できるだけ費用を抑えながら、自分で調停の手続きを進めたい」という場合には、司法書士に相談する方法もあります。

5.相続人が多い場合は、早めのご相談を

相続人が多いケースでは、戸籍を集めて相続人を確定するだけでも、時間や手間がかかることがあります。
さらに、これまで把握していなかった相続人が見つかった場合には、その方への連絡や、遺産分割協議を進めるための準備も必要になります。
相続人が多くて、どこから手をつければよいのか分からない場合には、まず相続関係を整理することから始めましょう。

当事務所では、戸籍の収集による相続人の調査や相続関係の整理、相続人への連絡方法についてのアドバイスなど、相続手続きを進めるためのお手伝いをしています。

お困りのことがございましたら、ぜひ当事務所にご相談ください。

次回は「相続人が海外に住んでいる場合」について解説します。

相続人が海外に住んでいる場合には、書類の準備や手続きの進め方など、国内に住んでいる場合とは異なる対応が必要になることがあります。

次回は、海外在住の相続人がいる場合に、どのような点に気をつければよいのか、分かりやすく解説します。